にゃーにゃー猫の日。


三毛猫の雄って生殖能力ないんだよね？確か。

[1回]

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｢にゃあ｣
｢にゃあ｣

そう声が聞こえてきて、ぴたりと三人は足を止める。
五年長屋の一室。表札には尾浜勘右衛門と久々知兵助。
三郎、雷蔵、八左ヱ門は顔を見合わせた。

｢勘右衛門？兵助？｣

三郎が声をかけてガラリと戸を引く。

｢にゃあ｣
｢にゃー｣

三人は三人それぞれの表情を浮かべた。
三郎は顔をひきつらせ、雷蔵は呆気に取られ、八左ヱ門は呆れたようにため息一つ。

彼らの眼前には黒い猫耳としっぽをつけた部屋の主の姿。

ピシャン！

と戸を閉めるが、内側からガラリと開き、二人が｢にゃー｣と鳴く。

｢何してんだお前らぁあああぁぁああっっ！！｣

三郎が怒鳴ると、二人は顔を見合わせる。

｢にゃーお｣
｢ぅにゃあ？｣

ビシッ、と三郎のこめかみに青筋が浮かぶ。
｢人語を話せよお前ら！八左ヱ門は猫じゃらしふらないの！！雷蔵は兵助の顎を掻くな！！猫じゃらしに飛びつくな勘右衛門！！｣

｢｢｢｢三郎五月蝿い｣｣｣｣

四人に言われ、三郎は拳を震わせる。
｢俺が悪いのか…？｣

｢でもホントに何してるの、二人とも｣
雷蔵が問うと、彼に顎を掻かれている兵助が答える。
｢今日は2月22日だから｣
｢にゃーにゃーにゃー猫の日だよ。雷蔵｣
追って勘右衛門が答える。
｢でも今日のは特別｣
｢にゃーがいっぱいなんだあ｣
｢へいせい22年2月22日でにゃーが五個なのだ｣

にゃーと鳴きながら勘右衛門は部屋の押し入れに向かう。嫌な予感がして雷蔵は精一杯の抵抗を試みる。

｢へいせいって何！？僕たち室町っ子だから分からないよ！！｣

｢雷蔵。ここは三十六計逃げるに如かずだ！！｣
同じように嫌な予感を感じたのか、三郎が雷蔵の肩を掴む。

｢遅いよ｣

兵助と勘右衛門の黒髪が舞うのを認識した瞬間には全てが終わっていた。



三郎、雷蔵、八左ヱ門の頭には猫耳。どうやったのか、袴からはしっぽがゆらり。

｢今年は2が五つだから｣
｢五人でやろうと思って｣
二人は満足げに頷く。


｢勘ちゃん、兵助。三郎だけ黒猫じゃなくて三毛なんだけど｣
雷蔵が不思議そうに問う。八左ヱ門は何か察したのか｢あー…｣と視線を逸らした。

｢あぁ、それ｣
｢三毛の雄は生殖能力ナイから｣
｢三郎は一代限り｣
｢衆道は子をなせないから｣
ねー。


｢そ・れ・は、お前らもだろおおぉがああぁああっ！！！！｣
猫耳をむしり取り床に叩きつける。
まあ心外。とばかりに二人は三郎を見た。

｢僕たち女の子にちゃんと興味あるもん。ね、へーちゃん｣
｢そうだぞ。三郎みたく寝ても覚めても雷蔵のこと考えてる変態じゃないな。ね、勘ちゃん｣
にゃー。
にゃー。


｢ダメだよ二人とも。いくらそれが真実とはいえ僕としてもいい加減にしろよ三郎キモいんだよとか思ってても口にしちゃいけないんだよ？｣
にこにこにこやかに雷蔵が言うと、心に大ダメージを受けた三郎が八左ヱ門に介抱されていた。
｢雷蔵ーお前もな｣
乾いた笑いと共に八左ヱ門はツッコんだ。