この せかい で いちばん の おひめさま

[0回]

　この世界に来てしばらくして、ようやく私は三郎を見つけた。
　その時はたまたま小松田さんと雑談をしていて、不意にぴくりと小松田さんが身じろいで「誰か来た」と呟いて「ああ、大丈夫。入門表にサインしたみたい」だなんて電波な答えを返したものだから面食らったものだけど。
　あの時小松田さんが門の方へ行き、私も行っていたら…任務で疲れただろう三郎に満面の笑みで「おかえりなさい」って言って高感度アップだったのに。

　……過ぎたことはしょうがない。

　結局彼が帰ってきたことを知ったのは私を探していた五年生の面々が話してくれた時。
　疲れているから、って部屋に引っ込んだらしいから、押し掛けることさえできない。だってそんな時に押し掛けたら空気が読めない嫌な子になっちゃうじゃない？

　その前に会った美ぃちゃんの同室の沙衣ちゃん。
　すっごく可愛くて綺麗な沙衣ちゃん。
　美ぃちゃんって美ぃちゃんのことを呼んだらヒヤリとした空気が渦巻いた気がしたけど、すぐに美ぃちゃんの容体を見に走って行っちゃった。

　あの子と二人で任務に行ったのよね。
　三郎が沙衣ちゃんを好きなんてありえない、ってみんな言ってたけど。

　変装が得意、だなんて共感できるじゃない。
　もしかすると、素顔見てるかもじゃない。

　でも大丈夫。
　私はこの世界のお姫さま。
　私が決めた王子様は三郎なんだから、絶対に彼は私を好きになる。
　それは自然の摂理なの。
　お姫様は王子様と幸せになりました。

　だから、気にしないことにしたの。

　沙衣ちゃんはいい子だし。
　煙硝蔵で怒ったのも、私の為を思ってだし。怖かったけど。そのあとにおにぎり持っていったらありがとうございますって笑ってたし。

　五年生と仲良く話してるのを見ても私は怒らないの。

　三郎と眼が合わないのは、彼が照れているだけって分かってるし。

　ねーえ？　早く私の手を取ってよ王子様。

だって私はお姫さま！！