ツキトリム幸せであるようにと…私は希う｡

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色々ネタ置き場（主にRKRN）。主に二次創作・夢小説系。ごく稀にオリジナルもあるかもしれない。。。

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2024/12/30 (Mon)

幸せであるようにと…私は希う｡

成長､死ネタ、微グロ…？

綾部視点｡
オフで発行している｢私が彼を嫌いな理由｣の5章目直後の綾部｡

綾部27歳｡

[1回]

藤内､笑って？
僕の名前を呼んでよ｡

　血の色が失せた首は黙して語らず｡ただ安らかな顔をして永眠(ねむ)るだけ｡
　あの狂気で彩られた表情は影もない｡

　鶯色の袍を着た体は景観の綺麗な所へ埋めてきた｡私はその側でただ藤内の首を日がな一日眺めているだけ｡

｢喜八郎くん｣

　柔らかな声が降ってきた｡春の日だまり色の声｡

｢……タカ丸､さん｣

　タカ丸さんはいつものように柔らかな笑みを浮かべて､捜したんだよ大変だったんだから～と何でもないことのように言う｡

｢タカ丸…さん…鬼は､｣
｢うん…だから喜八郎くん｡首を体と一緒にしてあげて？浦風くんが彼岸に逝けないよ｣
　私は首を横に振る｡藤内が彼岸に逝くくらいなら私の側にいて欲しい｡

｢だめだよ｡喜八郎くん｡彼岸に逝かないと輪廻の輪に加われない｡僕たちも死ぬのはずっと先だろうけど輪廻に入る｡生まれ変わったときに浦風くんに会えないよ｡それでも良いの？｣
　会える保証もないじゃないですか｡そう口を開こうとして､死ぬ前も死んだ後さえも藤内に想われていた忌々しい男の顔を思い出す｡
　そうだ｡彼岸へ逝ってしまうということは藤内があいつに会うということ｡また！またあいつに藤内を取られると　いうの！？

　そんなの…嫌だ｡

　私はまだ藤内と居たかった｡他愛ない話をして､ご飯や甘味を食べたり､あの雨の日以降…失ってしまった優しい時間を過ごしたかっただけ…｡

｢喜八郎｡君は分別のある大人でしょう｡頑是無い子どものように駄々をこねれば良いわけでもない｣

　私はぎゅう…と藤内の首を抱きしめる。肉の崩れる音がする｡腐敗を遅らせるように処置はしたけど､このように力任せに抱きしめると崩れるほどには腐ったのか｡胸から離すと綺麗な藤内の顔が無惨にも崩れている｡あｰあ｡とても綺麗だったのに｡いっそのこと骨だけにしてしまおうか｡皮や肉を落とし､真っ白にしてしまおうか｡藤内の頭は綺麗な形をしているから頭蓋骨はきっと綺麗だ｡うん､そうしよう｡

　パンッ！

　と乾いた音がした｡遅れてじんわりと痛みが走る｡

｢それは､死者への冒涜だよ｡喜八郎｣

　どうやら声に出ていたらしい｡…ねえ､タカ丸さん｡何で泣いているの？

｢そして君までも生きながら彼岸の者になってしまうよ…？僕はそんなのイヤだよ…｣

｢そうなれば､藤内と話せるかなあ｣
　まだ話したいことがいっぱいあったんです｡色んな美味しいものや綺麗なものを見せたかったんです｡あの日から陰のある笑みしか見せなかった藤内が､昔みたいに笑うところを見たかったんです｡

　タカ丸さんが私を抱きしめる｡
　帰ってきてよ､と泣いている｡
　私はここにいますよ｡タカ丸さん｡

　タカ丸さんの肩越しにに藤内が見えた｡

　藤内？

　藤内はにこりと笑った｡私の大好きな暖かいお日様の笑顔｡藤内の表情で一等好きな笑顔｡

　口が動く｡声は聞こえない｡
　でも私たちは忍だから､唇の動きで何を言っているかは分かる｡

……………………………藤内｡

　うん｡そうだね｡藤内｡

｢タカ丸さん……｣
｢喜八郎くん……？｣
｢穴を掘るのを手伝ってくれますか？｣
｢いいよ｣

　ほどかれる腕を私はとっさに掴む｡

｢喜八郎くん？｣
　うん､そうだよ｡そうだね､とｰない｡この人はいつも私がまいっている時に側にいてくれた｡

｢迎えに来てくれてありがとうございます｣
　タカ丸さんはいつものようにへにゃりと笑う｡
｢どｰいたしましてぇ｡浦風君の首を体と一緒にしたら早く帰ろう｡滝くんも三木くんも待ってるよ｣
　ぷんすか怒っているだろう二人を容易に想像できて私はげんなりする｡
｢……滝も三木も説教が長いから､ヤです｣
｢お説教が長いのは心配している証拠だよ｣

　土饅頭に花を供え私とタカ丸さんはその場を後にする｡あの村はあの日､藤内を殺したあと火を放って焼き尽くした｡疫病が流行る可能性を考慮した結果だ｡だから藤内……鬼が火を放ち､その身を投じ､死体は誰のものか判別不可能になったことにする｡今後鬼が出ないのだからそれで良いだろう｡

｢タカ丸さん｣
｢なｰに？喜八郎くん｣
｢生まれ変わってもタカ丸さんと会えたらいいです｣
　きょと､と目を丸くして､タカ丸さんは笑う｡
｢そうだねｰ｡僕もそう思うよ｡でもまだまだ生きるけどね～｣
｢私もです｣

　天寿を全うして…君に会いに行くよ｡その時はいっぱい話そう｡

　来世でも君とあなたに会いたいな｡いっぱい話していっぱい遊んで｡
　皆幸せであればいい｡
　優しい君も､優しいこの人も｡

　ずっと､いつも彼らが幸せでありますように｡
　来世でも幸せでありますように。
　そう私は希う。

2010/02/19 (Fri) らくらん。転生パロ Trackback() Comment(0)

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