バレンタインネタ。

喜八瑠ちゃんが非常に上機嫌→珍事

喜八瑠→中等部二年。
藤内 →一年。ちょっとだけ『昔』を思い出した。

[0回]

　その日は少年少女がどこかしらそわそわとした様子で過ごす日であり、中等部二年一組の綾部喜八瑠も普段の無表情が打って変わってにこにこと笑顔である。同室の平滝姫は理由を知っているので呆れ顔だが、理由を知らないクラスメイトたちは一体何が起こるのか戦々恐々としている。

｢うふ、ふふふ～｣
　しかも笑い出すものだから余計に怯えるクラスメイトを横目に、滝姫は深々とため息をついた。
｢喜八瑠。周りが怯えるから止めろ｣
｢えー？私が笑うだけで怯えるとかワケわかんない。だってさぁ滝姫、藤内がチョコくれるって言ってくれたんだよ？嬉しいじゃない｣
　もちろん私も準備してるけど。
　と可愛くラッピングされた箱を取り出す。中身はもちろん手作りだ。
｢はいはい。早く浦風が来ると良いな｣
｢うんっ！早く藤内来ないかなぁ｣

　ウキウキと嬉しそうな喜八瑠の理由を知れたクラスメイトたちはほっと胸を撫で下ろした。某一年二組の体育委員抹殺計画とか立ててたらどうしようとか思っていた"付き合いの長い"クラスメイトたちは心の底からほっとした。理由が分かると何とも微笑ましい光景である。


｢喜八瑠先輩っ｣

　と、喜八瑠の待ち望んだ声がかかり、彼女の表情が一気に華やぐ。

｢藤内っ！！｣
　席を勢いよく立って教室の入り口に駆け寄る。
｢はい、お約束のバレンタインチョコです｣
　市販の物らしい包みを渡され、喜八瑠はとても嬉しそうに笑う。
｢ありがとう！藤内！！あのね、私もあるんだよ。受け取ってくれる？｣
　そう言って喜八瑠はチョコレートを渡した。
｢ありがとうございます。喜八瑠先輩｣
｢自分で作ったから藤内の口に合うと良いんだけど｣
　喜八瑠の言葉に藤内は目を丸くして、ラッピングされた箱と喜八瑠を交互に見返す。
｢喜八瑠先輩が作ったんですか？｣
　困ったように藤内の眉尻が下がった。
｢うんっ！｣
　喜八瑠は大きく頷いた。その後ろからにゅっと滝姫が現れ、眉尻を下げた藤内に向かって口を開く。
｢安心しろ、浦風。喜八瑠の料理の腕前は私が保証する。『昔』のような前衛的な味付けなんぞしないようになっている｣
　それを聞いて、藤内がほっと胸を撫で下ろした。
｢それを聞いて安心しました。では喜八瑠先輩、あとで美味しくいただきますね｣
｢うん。私も大事に食べるね！｣
　キラッキラとした笑みを振りまきながら喜八瑠はぎゅっとチョコレートを抱き締める。
　それじゃあ、と藤内は頭を下げて自分の教室へと去っていく。にこにことしたまま喜八瑠は滝姫を振り返る。
｢あげないからね｣
｢わかってる｣
　滝姫はまた深々とため息をついた。

　余談であるが、その日一日、笑顔の喜八瑠という珍しい光景を見たさに中等部、高等部から見物客が押し寄せて来たと言う。

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ちょっとした設定みたいな。

喜八郎→見かけはとても美味しそう。味が酷い。裁縫とか超苦手。滝夜叉丸に丸投げ。
喜八瑠→今生の母親に仕込まれて料理上手。意外と家事全般得意。お陰で滝姫と三希が互いの頬をつねりあって夢じゃないかを確かめていた。