五のい二人組と。
五のいは正雪に甘えたである。

[0回]

　久々知兵助の朝は隣の人間が動くことから始まる。

「……まさゆき……？」

　流れる白い滝のような髪を簡単に結い上げている正雪が兵助を振り返り朝一番の笑みを見せる。

「おはようございます。兵助」
「おはよう。正雪」

　そして、正雪の腰にしがみついてる人間に向かって一発蹴りを入れる。意地でも手を離さないし起きないけれど。

「正雪。勘ちゃん」
「はいはい。勘右衛門、朝ですよ。起きてください」
「あと一刻……」
「それは長いですよ。起きてください、勘右衛門」

　ちなみに、これを見るのが一番嫌だったりする。
　まるで夫婦のようでムカつく。
　いつ頃からかこの調子だ。昔はもう少し手荒だった気がする。兵助は眉間にしわを寄せて抗議する。

「正雪。蹴るなり叩くなり引っぺがすなりすればいいのに！」
「叩いても効果がありませんから。蹴ろうにもいい感じに体重かけてくれているので立てないですし…引っぺがすにも腕力が足りません。やはり、五キロ算盤から十キロ算盤に変えていただいた方がよいでしょうか……兵助は寝起きが良いので嬉しいんですけれど」
　袖をまくり力瘤を作るように腕を曲げるが、力瘤はできていない。白く細いなよやかな腕がすらりと伸びているだけである。
「正雪は体弱いから。潮江先輩の唯一の気遣いを不意にしてはいけないと思う。それで倒れたら俺たち、潮江先輩を襲撃するよ」
「その体の弱さを克服するために学園に参ったのですけど」
　苦笑する正雪に兵助は真顔で答える。
「でも大分強くなったよ。ちょっとしたことで寝込んでたのが、今ではもうないじゃないか」
「…そうですねえ。それよりも、勘右衛門、勘右衛門早く起きてください。準備が儘ならないでしょう」
「うー」
　勘右衛門は唸るだけである。
「正雪。髪結って」
「はいはい。兵助も甘えたさんですね」
「ん」
　櫛と髪紐を受け取ってにこにこと正雪は兵助の髪を結い始める。

「……妻子持ちならぬ夫子持ち……」
「ていうか二人分の布団に三人寝ている不思議」
「あいつらの依存っぷり気持ち悪い」
「おう、お前ら。相尾は部屋に「潮江先輩今来ちゃダメですあいつらが暴走する」……何だ、あいつらまた相尾の部屋に入り浸っているのか？」
「何かもう済みません」
「いや、謝られる必要はねぇがな…。じゃあ、飯食う時にでもこれ渡しといてくれ。実習でしばらく空けるから委員会の必要事項を書き出してあるもんだ」
「あ、了解しました。実習お疲れ様です」

ろ組と潮江。