幼少タカ綾バレンタインデー。

とりあえず、六歳と四歳の会話じゃない気がする。
精神的には結構老成してるからなぁ二人共。
まあ、室町時の記憶がある時点で普通の子どもじゃないからまあいいかと思っとく。

五月に出そうと思ってるタカ綾本の布石といえば布石な話。
生かせるといいなとか思ったりするけどどうだろう。

そしてそんなに甘くない。
バレンタインデー小話なのに。

最初は喜八瑠ちゃんのパパママも出る話だったけど、蛇足過ぎたので削除。
パパは敬語でおっとりさんな感じで、ママは○マのユーリ母っぽい感じ（笑）二人とも従兄妹同士という設定があったり。

[0回]

「きはちゃんが作ったの？」
　私は幼稚園が終わった後、小学一年生の隆丸さんの帰りを待って、隆丸さんの家に行った。隆丸さんの部屋でオレンジジュースを戴きながらチョコレートの入った包みを隆丸さんに渡した。
「はい。ママと一緒だけど」
　四歳の体じゃ火や包丁なんて絶対扱わせてもらえないし。というか、バレンタインデーのチョコレート作りはママが「今年は隆丸君にも作りましょう♪」とすごくウキウキした様子で作り始めて引っ張り込まれたんだけど。
「ありがとう。すごくうれしい」
　ふにゃ、と笑み崩れる隆丸さんに私もうれしく思う。私の表情は傍から見ると無表情ではあるけれど、隆丸さんは些細な私の変化にも目敏く反応してくれるので、隆丸さんはますます笑みを深くした。
「きはちゃんもうれしそうだねぇ」
「喜んでくれるの、うれしいから」
　舌っ足らずの私の言葉ににこにこする隆丸さんが頭をなでる。それもちょっとうれしい。
「開けてもいい？」
「はい。どうぞ」
　包みを開けて箱の中身を見た隆丸さんは目を丸くした。
「トリュフだー。うわぁ、すごいね、きはちゃん」
「溶かして混ぜて冷やして丸めて塗しただけですよ」
　丸めて塗す過程は粘土遊びっぽくて面白かった。掌がチョコレートとココア塗れで作り終わって舐めるのがすごく楽しみだった。美味しかった…。
「いやでも四歳の子が作るのはすごいよー」
　……それもそうだ。普通なら溶かしたチョコレートを型にいれて固めるくらいが妥当な線。でもママもいたし、材料は全部ママがそろえてくれて、指示通りにしただけだしなぁ、と私は思う。
「大事に食べるねー」
「でも早めに食べてください」
「うん。でも大事に食べる。すっごくうれしいから」
　にこにこにこにこと隆丸さんは笑顔だ。
　この人が笑顔だと自分も笑顔になれそうな気がする。藤内が笑った時も心の中が暖かくなって笑顔になれそうな気になれたけど、今の隆丸さんの笑顔を見ると藤内の時と同じようで何かが違う。何が違うのかは分からないけれど。
「隆丸さん、ありがとうございます」
「お礼言うのは僕の方でしょ？　変なきはちゃん」
　くすくすと隆丸さんは笑う。私も何でお礼を言ったのかがよく分からない。分からないから私もつられて笑ってしまう。自然と笑みが浮かぶのはとても久しぶりな気がする。笑っていると「きはちゃんの笑顔は可愛いねぇ」と隆丸さんが言ってさらに微笑んだのだった。