其は天女というが、天女とはそう易々と下界に降りぬモノ。
七話目。

天女視点。

…何か、変。
……なぜかしら？

[0回]

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北條明日香（ほうじょうあすか）…「平成」から来たという天女と呼ばれる現代人。高校二年生。夢見る思い込みの激しい少女。この世界のヒロインなのだから何やっても良いのだと思っている。常識があるはずなんだけど、ぶっ飛んでる。

傍観主ら。：
柚月汐琉（ゆづきしおる）…くノたま四年。用具委員。天女と只今同室。実際は志帆と同室。天女の要望で天女の傍にいる。実際超嫌。でも周りが可哀想じゃないとかそんなん言って無理矢理そのまま。保健委員の親友を持つ者特有のプチ不運発動。ポルトガルとハーフな金髪緑眼の美少女。でもその容姿にコンプレックス。

五瀬志帆（いつせしほ）…くノたま四年。不運じゃない保健委員。”狂科学者（マッドサイエンティスト）”　の異名を持つ。根は優しいのだが、実験となると目の色を変える。
視力は良いが調合中は眼鏡をつける（目の保護のためと思われる）。伊達眼鏡

*川瀬明菜（かわせあきな）…五年は組。体は女だが心は男。物心ついた時から自分は男だと思っている。なので入学の際、学園長に頼み込み忍たまに。実家が薬師を生業としていて、勝手の分かりやすい保健委員に。三郎たちや五のはの生徒たちやくノたま上級生、委員会の生徒は理解してくれているのでそれなりに生活できる。

*森野刃衣（もりのはごろも）…学園の近くに設けてある鍛冶工場の女鍛冶師。学園専属。九州は筑前の国の出。腕は良い。体育委員のランニングについていけるほどの体力がある。一年は組と仲が良い。

*の人に関してはナルちゃんの所で見てもらうと。。。
 

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　カチリ、カチリ。
　噛み合わなかった歯車がゆっくりと噛み合い始めて回り始める。

　その様子をほくそ笑みながら眺める者たちがいた。

 

　……？
　何だろう。視線が痛い。

　今までこんなことなかったのに。どうしてかしら。
　いつも向けられる視線は甘やかなもの。
　とろりとした羨望と称賛の視線。心地良いものばかり。
　どうしてかしら。
　不思議だわ。

　そう。不思議と言えば。
　変な噂ばかりが耳につく。
　私が男だとか、そんな下らない噂なのだけれど。
　それは皆で大笑いしてあげたけど。

　何かいけない事でもしたかしら？
　この一カ月近く、私は色んなことをしたわ。

　学園の雑用や食堂、委員会のお手伝い。

　そうそう。
　皆未来の話をすると「すごいね」って言うのよ。
　うふふ。当然のことなのにね。

　ああ、でも。

　明菜君は嬉しそうではなかったわ。

　川瀬明菜君。
　女の子みたいな名前だけど男の子なんですって。中性的な顔に声。綺麗だからどちらにも見て取れる。でも胸はぺたんこだったし。

　苦無も手裏剣も持たなくて良くて、闇の中で生きる必要がないの。人を殺さなくていいの。傷つけなくていいの。未来ではそういうことをすると警察…役人に捕まるのよ。
　皆光の中で暮らせるの。忍なんて職業、未来には存在しないんだから。皆自由に暮らせるの。とても素敵でしょう？

　そう言うと、皆「すごいね」「そんな世界に早くならないかな」「平和で良いですね」って嬉しそうに言うのに。

「では私たちは必要なくなるのですね」
　って悲しそうに言うの。

　不思議ね？
　嬉しくないの？
　素敵だと思わないの？

　人を傷つけなくていいのよ？
　殺さなくていいのよ？
　手を血に染めなくていいんだから。食べるのにも困らない。着るものにも困らない。
　きりちゃんみたいに戦で親を亡くさないでいいわ。死に物狂いでバイトなんてしなくていいのよ？
　安全で平和な世界。

　皆望むでしょう。憧れるでしょう。

　でも、明菜君はそんな様子がなかった。
　寂しそうに笑うだけ。

　なぜ？
　なぜなの？

　そうしてこの、視線。
　何？
　何なのかしら。
　私、何かしたかしら？

　そう。
　それと、汐琉ちゃん。
　汐琉ちゃんは良い子だわ。
　嫌な顔せずに色々と教えてくれる。
　同じ部屋なの。髪の梳かし合いっこもしたのよ。ハーフだけあって胸も立派なものだったわ。あれは負けたわね。まだ十三歳なのに。発展途上なのに。負けた……。
　くノたまの子とも当たり障りなく接せているようで、特に何もされていない。結構大変かな、と思ったけど、やっぱり汐琉ちゃんを味方に引き入れておいて正解ね。
　留君に聞いていたのだけれど、汐琉ちゃんは人格者だから同級生下級生、上級生のくノたまに信用があるのだとか。汐琉ちゃんが信用した人物なら受け入れる、そういう姿勢のようだったわ。くすくす。私って人を見る目があるのね。

　でも本当、何なのかしら。
　鬱陶しいったら。

　早く留君を探して、刃衣さん、という人の所へ行かないと。

　もう。一体何なのかしら。

 

≪　≫

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包囲網は狭まり、罠にかけられた兎は逃げることもままならぬ。
ああ、そこに心優しき猟師など、居はしないのだ。