妖パロ。

勘ちゃん→(仔)鴉天狗
三郎→白狐

木下先生→お師匠(鴉天狗)

[0回]

 

　高い高い杉の木の天辺。毛先が黒い白い羽団扇をばさりと勘右衛門は楽しげに扇ぐ。山伏の格好をした子どもの背には異端を示すかのように漆黒の翼が畳まれている。大きな丸い目は森の木々の上を今しがた走った大風を見ている。そうして羽団扇をためすがめす見てにっこりと笑った。

｢何しているんだ、勘右衛門｣
　隣の杉の木の天辺に、ゆらゆらと白い尾を揺らして白狐が人の形に変化する。勘右衛門とよく遊んでくれる狐だ。
｢はちや。お師匠に貰った。天狗の羽団扇｣
　ぴょんっと勘右衛門は軽やかに、はちやと呼んだ人身を纏った白狐の膝に飛び乗った。
｢あぁ、風を巻き起こしたり雨を降らしたり…万物を動かすための妖力増幅装置だな｣
　はちやは、博識なようで勘右衛門の持つ羽団扇をしげしげと眺めた。

｢術が大分上達したから、お師匠が今度はこれを使って力を制御出来るよう修行って｣
　妖力を少し込め、そよと扇いでもびょう、と強い風が吹く。
｢格段に威力が増すからしいからな。木下の旦那は元気か？｣
｢お師匠はいつも元気だよ。はちや、今日は何の話をしてくれる？｣
　勘右衛門がそうねだると、ふむ、とはちやは頷いた。
　はたはたと黒い鴉羽を動かしながら羽団扇をふぅわりふぅわりと扇ぐ。にこにこと嬉しそうに団扇を弄くる勘右衛門を見て、うずっと悪戯心が頭をもたげた。

　ぽぉい、とはちやは勘右衛門を放った。

｢！？｣

　勘右衛門は目を白黒させて、くるりと一回転。普段は小さい鴉羽がバサリと音を立てて大きく広がった。

｢～～～～っ、はちやっ！！何をするんだ！？｣
　そう戸惑いと怒りを含んだ声が上がる。
｢ふぅん、力の質は関係ないようだな｣
　放る時に掠め取った羽団扇をはちやはバサリと扇いだ。

　轟っ、と風が舞う。体が小さな勘右衛門はその風に巻き込まれころころと宙を転げた。風が収まった頃にははちやの姿も気配も何もなかった。

｢………………、あ！羽団扇を持ってかれた！！｣

お師匠に怒られる…！

　取り戻さねば、と勘右衛門は昔聞いていたはちやの住処の方へ翼をはためかせた。









そんな始まり。
うん、続くかな。