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浦風藤内→浦風藤内♀
綾部喜八郎→綾部喜八瑠(きはる)♀
その人は笑顔なのに泣きそうでした。
私立大川学園中等部。
何かに惹かれて私は、「見学するだけなら別にいいじゃない!」という友人たちと共に先生の引率で大川学園見学にやってきた。
大川市内の小学校は勿論、市外県外の小学生も見学に来ている。
不思議なことに見覚えがあるような子がちらほらいたような気がする。
学園長先生と中等部生徒会長(ものすごい美人)にも何か見覚えがあったけど、なぜなのかは分からない。
自由時間になって、いろいろな場所を見て回った。
図書館(二階建の独立した建物。レンガ造りでなんかすごかった)や食堂(すごく広い)や特別教室や普通の教室。何か、委員会室とかがそれぞれあったり。
四階の一年生の教室を見て回っていたら前方からものすごい美少女が歩いてきた。
スラっとしたスタイルの良い体つき、ふわふわのウェーブがかかった色素の薄い髪が歩くリズムに合わせて揺れる。小さい顔にバッチリの配置で大きな目や形の良い眉、鼻、唇が収まっている。
本当にすごい、美少女。
でも、やっぱりデジャヴ。何だろう。この学園に来てからそれが酷い。
友達はそんな美少女が近づいてくるのに気付かないでお喋りを続けている。
「中等部は三クラスしかないんだねー」
「高等部は十クラスあるらしいよ~」
「隣のお姉ちゃん、高等部にいるよ。制服超可愛いの」
「中等部のセーラー服も変わってるよね」
「スカーフじゃなくてリボンでしょ」
「そういえば学年カラーが中高通してあるんだよね。六年間同じ色」
「来年入ったら私たち何色かなあ」
「黄緑、って聞いたよ~」
「藤内好きな色じゃん。良かったね~」
その美少女は立ち止まって、じっとこちらを見る。
その表情は無表情の筈なんだけど、すごく、泣きそうだった。
そうしてゆっくりと、こちらに近づいてくる。
そこでようやく友達たちが気付いて目を丸くした。
すっごい美少女ー!
こそこそと小声で言葉が交わされる。
「こんにちは。見学者の子?」
にこり、とその美少女が笑う。途端みんな顔を真っ赤にする。でもその笑顔はちょっと胡散臭い。綺麗過ぎる。…何でそう思うのだろう?
「は、はい!」
上ずった声で友達が答えると、くすくすとその美少女は笑う。大人っぽい。セーラー服のリボンの色は紫。一年生だ。年齢が一つ違うだけで、こんなにも違うものなのだろうか。
「私は中等部一年の綾部喜八瑠と言います。この階の先はもう生徒会室しかないから、他の所を回った方が良いと思うわ」
と、綾部さん…違和感があるなあ…がそう言うと、友達がどうしようか。と首を捻った。と、綾部さんが言葉を続ける。。
「あなた達はどの辺りを回ったの? 良ければ案内をしましょうか? ちょうど暇なの」
美少女を連れ歩ける。そう思った友達らは一も二もなく許諾した。みんな綺麗な人好きだもんねえ。
クラブハウスや中等部の生徒が必要とするであろう所を丁寧に教えてくれる綾部さんは笑顔を絶やさずに私たちとお喋りを交わす。綾部さんは県外から来たらしく、寮住まいなのだそうだ。話の内容は、入試の傾向だとか、この学校での話。同室の子が世話好きでよく身だしなみなど注意をたくさんするから面倒くさいと話したり、先輩がよくお菓子をくれるなど、他愛のない話。
途中、中等部の生徒であろう人がぎょっとしたように綾部さんを見るのは何でだろう。
そして、笑顔の筈なのに、私を見るたびに泣きそうな表情に見えるのは、なぜなんだろう。
あっという間に時間は過ぎて、集合時間が近くなった。
「あ。もうこんな時間! 綾部さん、ありがとうございました。もう集合時間になるのでこれで失礼します。案内してくれてありがとうございました」
一人の友達がそう言って頭を下げると、みんなで一斉に「ありがとうございましたー」と頭を下げる。
「どういたしまして。こちらも楽しかったです。」
綾部さんも頭を下げる。
「来年、同じ制服を着れるといいですね」
笑顔でそう言ってくれて、みんな感極まったように「はい!」と返事をする。そうして皆集合場所の体育館へ走っていく。私も走ろうとしたのだけども。
どうしても、聞きたくて、残った。
「どうか…しましたか?」
不思議そうに困惑したように綾部さんは問う。
「あの…綾部さんと私、どこかでお会いしたことありましたか?」
「……いいえ?」
そう聞いたらそう答えが返る。嘘。じゃあ、じゃあ…。
「じゃあ、なぜ、私を見るたびにそんな泣きそうな顔をしているんですか?」
今も、すごく泣きそうな顔をしているのに。
綾部さんは何を言っているの、とばかりに首をかしげた。そう。見た目は笑顔なのだ。全然泣きそうな表情じゃない。
でも、目元や眉尻、ちょっとした些細な変化。それは泣くのを我慢しているもので……あれ、何で…。
何で私はそんなことを知っているのだろう。
「笑ってるんですけど、泣きそうなんです。私、何かしましたか?」
思ったままのことを言うと、綾部さんは微笑む。
「いいえ。何も。気のせいですよ。ほら、時間に間に合いませんよ」
左手首を返して綾部さんは時間を確認した。
「……分かりました」
集合場所である体育館の方へ足を向け、私は振り返る。
「私、絶対試験合格します。同じ制服を着ます。だから、泣かないで。綾部先輩」
綾部さん…綾部先輩はそう呼ばれた事に目を丸くして笑う。それは本当に心からの笑顔。さっきまでの作ったような綺麗な笑顔ではなく。
「泣いてませんよ。早く行きなさい」
そうしてひらひらと手を振った。
「ばいばい。藤内」
『ばいばい。藤内』
その声にかぶさるように綺麗な男の人の声が耳の奥で響く。
白い丸い月と黒い装束。ふわふわの髪が風に揺れる。右手に銀色に輝くもの。泣きそうな顔の、男の人。それらがざざっとノイズと共に脳内を巡る。
我に返った時には綾部先輩は体育館の方とは反対方向に歩いていた。
綾部先輩。
この、不思議なデジャヴはこの学園に入ると、解決しますか?
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