[0回]

逆ハ主:
北條明日香(ほうじょうあすか)…平成から来た少女｡高二｡空から落ちてきたことで“天女”だということに｡自分が逆ハ主だと知っている｡

傍観夢主ら(複数いるよ!):
柚月汐琉(ゆづきしおる)…くのたま四年｡行儀見習組｡用具委員｡日葡ハーフ｡金髪翠眼｡しっかり者で面倒見がよく人がいい｡自分の容姿にコンプレックスを持つ｡
五瀬志帆(いつせしほ)…くのたま四年｡くﾉ一組｡保健委員｡医者の娘｡薬学の為に保健委員に｡なので不運じゃない｡“狂科学者(マッドサイエンティスト)”の異名を持つ｡変な薬をよく生成する｡でも根は優しい｡調合時には眼鏡着用｡

　志帆の手伝いで保健委員会の薬草園で薬草を摘んでいると運動場の方が急に騒がしくなった｡
　志帆と二人目を合わせて首をかしげる｡いつも何かしら騒動が起こる学園だけど､何か､変｡異様な気がする｡

｢何でしょうか｣
｢分かんない｡でも､何か変だよ｡気持ち悪い｣
｢汐ちゃん､顔が真っ青ですよ｡医務室へ参りましょう｡運動場の方は後で誰かしら医務室へ足を運ばれるでしょうからその時にでも伺えば良いことです｣
　私から背負い籠を取り､自分の籠へと薬草を移し(勿論､種類別に袋に分けてある)て私に肩を貸す志帆はお医者様のようで｡これで普段の“狂科学者”振りがなりを潜めておけばいいのに……｡
｢汐ちゃん｡今､私に対してとｰっても失礼なこと思ったでしょう｣
｢思ってないよ､志帆｣
｢そんなこと言っても無駄ですよ｡汐ちゃんは顔に出やすいんです｣
　くすくすと志帆は笑う｡

　こんな穏やかな時が､この箱庭でずっと続くものだと思っていた｡

　“天女”が現れるまでは｡

｢柚月先輩､ご飯どうぞ｣
　私は結局熱を出していたようで｡そりゃあ､気持ち悪くなるよ｡
　乱太郎が差し出したお膳を受け取り､おばちゃん特製のお粥を食べる｡食欲はあるから明日には治るだろう｡

｢そういえば､乱太郎｡運動場で騒ぎがあったよね｡何だったの｣
｢えｰっと､私にもよく分からないんです｡実際直に関わったのは用具委員長の食満留三郎先輩と体育委員長の七松小平太先輩､会計委員長の潮江文次郎先輩なので｣
｢留先輩も?　じゃあ､明日聞こうかなあ｣
｢……無理だと思います｣
　困ったように乱太郎は眉を寄せた｡
｢なぜ?｣
　その答えは乱太郎の口からではなく､志帆の口から聞くこととなった｡

｢な･ん･で･す･の･あ･の･ア･マアアアアアアアアアアアアアッッ！！！｣

　医務室へ戻ってきた志帆の最初の言葉はそれだった｡
｢い､五瀬志帆先輩…！？｣
｢志帆､殺気を抑えて｡乱太郎がビビってるビビってる…｣
｢……失礼｡でも聞いてくださいな！　あれは一体どういうことですの！？　氏素性も分からないでたらめな方法で現れた女を､忍術学園の六年生が､現を抜かして惚けているこの事実！！　あの場にいた忍たまどもは全てあの女に心酔していたと言っても過言ではありませんよ！？　先生方は､学園長先生は一体何を考えていらっしゃるのかしら！！｣
　イライラをぶちまけるように薬研で薬草を高速で磨っていく志帆を乱太郎と二人でうわｰと眺めつつ､志帆の言葉の中にある単語に首をかしげる｡

｢ていうか､女？｣

　さっきの怒りはどこへやら、志帆は冷静に言葉を返してきた。

｢はい｡空から降ってきたそうなんです｡北條明日香さん｡“平成”という時代から来たと仰ってました｣
　年は善法寺先輩より年上みたいなんですけど､何か何も知らない幼子みたいです｡

｢志帆､先輩達そんなにヤバいの？｣
｢ヤバいどころか､三禁に触れていますよあれは！　沙衣先輩たちが見られたら一体どうなる事やら…血を見ます｡確実に｣
｢留先輩や潮江先輩､七松先輩が入ってたんだよね｣
｢あと伊作先輩､中在家先輩､仙様先輩たち他の六年も怪しいですよ｡五年の先輩方も｡果ては､三木君たちもです｡三年生は遠巻きにしていましたが…興味津々の様子｡二年は普段通り､一年は｣
｢先輩たちの執心具合をみてちょっと……｣
｢引いてる感じ？　くノたまは？｣
｢様子見､と言ったところでしょうか｡五､六年の先輩方は今実習中で学園を空けておられます｡先生方の対応も少し変です｡あの女がどこかのくノ一だと､そういう心配を微塵もしていらっしゃられないのでしょうね｡先輩方は｣
　次々と薬草を磨り潰し､手際良く湿布や丸薬､塗り薬を作っていく様は本当に見事だ｡

｢本当に､何が起こるやら｣

≫

序章みたいな｡
逆ハ主名前しか出てねえ｡