色々ネタ置き場(主にRKRN)。
主に二次創作・夢小説系。ごく稀にオリジナルもあるかもしれない。。。
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かさりと薄紅の薄様を心愛は慎重な手つきで広げた。しっかりとした筆運びは男のもの。仮名混じりでなく全て漢字のみで書かれたそれは、心愛にはまったく理解できないものだった。
「えぇと、ごめん、沙衣ちゃん。何て書いてあるのか、サッパリなんだけど」
射撃場を離れ、沙衣は誰の気配もない所を選んで心愛を連れて歩く。ちなみに今も立ち止まらずにうろうろと気配のない場所を選んで歩いている。
内緒の話なので、一所に留まらないようにするんです。
そう沙衣が言うと心愛は納得して頷いた。動いていると聞き耳立てられないもんね、と。
じーっと薄様を睨みつけるが全く以て読めない。平成人である心愛は筆文字と言えば書道の時間に使う楷書…もしくは草書を軽く書いただけなので、室町時代の文字はミミズがのたくったものにしか見えないし、読めない。元々国語も苦手な心愛にはお手上げ状態だ。なぜこんな字を読めるのか、書けるのか。それさえも彼女にとっては未知の領域だ。
「……心愛さんは文字が読めないんですか?」
「読めるけど、この時代の文字はミミズがのたくったようにしか見えないの。まず、私たちの時代じゃ筆で文字書く方が珍しいし…こんな流し字になっちゃうともうホントサッパリ。沙衣ちゃん、読んでもらって良いかな?」
「……まあ、読んで良いのなら読みますけど……。良いんですか?」
「良いよ。分かんないもん」
心愛の許可を得、それでは、と沙衣は咳払いをする。その口元には微かに笑みが広がっているが、心愛は気付かない。元々、彼女がこの時代の文字を読めない事など想定済み。さらに、その場合周りのものに読んでもらう恐れがあるので、このように人気がなく、己しかいない状況にする為に連れだしたのだ。
内容を知るのは己と心愛、それと三郎。
他の人間に知れれば後々自分たち疑いがかかるのは必然だからだ。
「“拝啓。園部心愛殿。このような手紙を突然お送りし酷く当惑されているかもしれません”」
内容は恋文。三郎が心愛に宛てた。
読み進めていく内に心愛の頬に熱が上り、とろりとした眼差しを沙衣の手にある薄様に向けられる。
「“尚、この手紙は読んだら燃やしてください。二人だけの秘密にしたいのでこの内容は心愛さんの胸の内にそっと納めていただきたいのです。”」
「え! ヤダ!」
思わず心愛は声を上げ、沙衣はきょとりと目を瞬かせる。
「燃やすの勿体ないじゃない! 折角…好きな人からのラブレターなのに」
「らぶ…? まあ確かに恋文を燃やすのは抵抗がありますけど、見つかると三郎が周りからボコられるのは確実ですね。その為の処置でしょう」
火種はありますよ。そう沙衣が言うと心愛はぶんぶんと首を横に振る。
「私が三郎君のこと好きって言えばそれで済むでしょう!?」
「そう言っても…うちの人間は冷静そうに見えて血の気が多すぎるんで……。素直にここは燃やして、折を見て明かしましょう。ゆっくりと愛を育んで、揺るがないほど強固なものにすれば、何人もそれを覆すことはできません」
「……でも」
心愛は逡巡し沙衣を、手紙を交互に見て困ったように眉を寄せた。他の者であれば「可愛い!」と悶絶し、仕方がないと手紙を手渡す所だが……目の前にいるのは沙衣である。そんなものが効く相手ではなので沙衣は平然と心愛を見ている。心愛は肩を落とし「分かった」と口にした。
簡単に手紙は燃え、灰は風に乗ってどこかへ流れたしまった。
「ねえ、心愛さん」
今思いついたとばかりに沙衣は瞳を輝かせて心愛を見る。
「隠すなら徹底的に隠しちゃいましょうよ。明日の昼でしょう、指定の時刻。私がその間心愛さんのフリをしておくのはどうでしょう? くノ一教室は明日お休みですもん」
「沙衣ちゃんが私のフリをするの?」
「んっふっふ。どれだけ天女様に近づけるか、って難易度高そうじゃないですか。変姿を得意とする者として常に向上心を心がけねば! ってね。心愛さんは私に化けて学園を出れば良い。私と三郎はよくお使いで組むことが多いから一緒に外に出ても怪しまれないし、三郎には事情を伝えるわ。不可抗力とは言え、人の恋文を読んでしまったもの。謝らないと」
すまなさそうにそう言うと、心愛は「そんな! 私が読んでって言ったんだもん!」とわたわたとした様子で言う。
「でも、どちらにしろ伝えとかないと。私の姿をした心愛さんが出門表にサインできるわけもないから、三郎にしてもらうとして。と、いうわけで明日起きたら私の部屋に来てくださいね」
にこりと満面の笑みで沙衣は有無を言わせぬよう念押しをする。
愛だの恋だの、お前に囁くものは所詮は戯言。誰がお前などに愛や恋を囁くか。
「えぇと、ごめん、沙衣ちゃん。何て書いてあるのか、サッパリなんだけど」
射撃場を離れ、沙衣は誰の気配もない所を選んで心愛を連れて歩く。ちなみに今も立ち止まらずにうろうろと気配のない場所を選んで歩いている。
内緒の話なので、一所に留まらないようにするんです。
そう沙衣が言うと心愛は納得して頷いた。動いていると聞き耳立てられないもんね、と。
じーっと薄様を睨みつけるが全く以て読めない。平成人である心愛は筆文字と言えば書道の時間に使う楷書…もしくは草書を軽く書いただけなので、室町時代の文字はミミズがのたくったものにしか見えないし、読めない。元々国語も苦手な心愛にはお手上げ状態だ。なぜこんな字を読めるのか、書けるのか。それさえも彼女にとっては未知の領域だ。
「……心愛さんは文字が読めないんですか?」
「読めるけど、この時代の文字はミミズがのたくったようにしか見えないの。まず、私たちの時代じゃ筆で文字書く方が珍しいし…こんな流し字になっちゃうともうホントサッパリ。沙衣ちゃん、読んでもらって良いかな?」
「……まあ、読んで良いのなら読みますけど……。良いんですか?」
「良いよ。分かんないもん」
心愛の許可を得、それでは、と沙衣は咳払いをする。その口元には微かに笑みが広がっているが、心愛は気付かない。元々、彼女がこの時代の文字を読めない事など想定済み。さらに、その場合周りのものに読んでもらう恐れがあるので、このように人気がなく、己しかいない状況にする為に連れだしたのだ。
内容を知るのは己と心愛、それと三郎。
他の人間に知れれば後々自分たち疑いがかかるのは必然だからだ。
「“拝啓。園部心愛殿。このような手紙を突然お送りし酷く当惑されているかもしれません”」
内容は恋文。三郎が心愛に宛てた。
読み進めていく内に心愛の頬に熱が上り、とろりとした眼差しを沙衣の手にある薄様に向けられる。
「“尚、この手紙は読んだら燃やしてください。二人だけの秘密にしたいのでこの内容は心愛さんの胸の内にそっと納めていただきたいのです。”」
「え! ヤダ!」
思わず心愛は声を上げ、沙衣はきょとりと目を瞬かせる。
「燃やすの勿体ないじゃない! 折角…好きな人からのラブレターなのに」
「らぶ…? まあ確かに恋文を燃やすのは抵抗がありますけど、見つかると三郎が周りからボコられるのは確実ですね。その為の処置でしょう」
火種はありますよ。そう沙衣が言うと心愛はぶんぶんと首を横に振る。
「私が三郎君のこと好きって言えばそれで済むでしょう!?」
「そう言っても…うちの人間は冷静そうに見えて血の気が多すぎるんで……。素直にここは燃やして、折を見て明かしましょう。ゆっくりと愛を育んで、揺るがないほど強固なものにすれば、何人もそれを覆すことはできません」
「……でも」
心愛は逡巡し沙衣を、手紙を交互に見て困ったように眉を寄せた。他の者であれば「可愛い!」と悶絶し、仕方がないと手紙を手渡す所だが……目の前にいるのは沙衣である。そんなものが効く相手ではなので沙衣は平然と心愛を見ている。心愛は肩を落とし「分かった」と口にした。
簡単に手紙は燃え、灰は風に乗ってどこかへ流れたしまった。
「ねえ、心愛さん」
今思いついたとばかりに沙衣は瞳を輝かせて心愛を見る。
「隠すなら徹底的に隠しちゃいましょうよ。明日の昼でしょう、指定の時刻。私がその間心愛さんのフリをしておくのはどうでしょう? くノ一教室は明日お休みですもん」
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「んっふっふ。どれだけ天女様に近づけるか、って難易度高そうじゃないですか。変姿を得意とする者として常に向上心を心がけねば! ってね。心愛さんは私に化けて学園を出れば良い。私と三郎はよくお使いで組むことが多いから一緒に外に出ても怪しまれないし、三郎には事情を伝えるわ。不可抗力とは言え、人の恋文を読んでしまったもの。謝らないと」
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参加予定。
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発行物。
かんたんなはなし(タカ綾)
この好きは『好き』でいいのでしょうか?(次浦+綾)
私は彼女が幸せであるよう希う(再録:私が彼を嫌いな理由。&ハッピーエンドをつかみとれ!)(次浦+綾)
海に関するetc.(次浦+綾(タカ綾))
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女性
誕生日:
1987/03/19
自己紹介:
五年(特にい組)と三年と綾部が好きな一般人←
最近ハートの国のアリスシリーズにハマったらしいです。
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