忍者ブログ
色々ネタ置き場(主にRKRN)。 主に二次創作・夢小説系。ごく稀にオリジナルもあるかもしれない。。。
[154]  [153]  [152]  [151]  [150]  [149]  [148]  [147]  [146]  [145]  [144
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

其の拾い物が、転機。


拾いモノ・壱

拍手[0回]






 忍術学園への道筋にこてんと転がる生き倒れ。
 このご時世さして珍しい物でもないので沙衣は素通りしようと足を速めようとしてふと、生き倒れを横目にちらりと見やった。そうして見るんじゃなかったと彼女は後悔した。小奇麗な服にあまり傷んだ様子のない髪。身体の大きさを見る限り、自分と同じか少し下の子ども。眉根を寄せて沙衣は一つ溜息をついた。このまま放置して物盗りに身ぐるみ剥がされた上に野犬に喰われてしまっては後味が悪いことこの上ない。
 膝をついて子どもの身体に触れるとまだ温かい……どころか、微かであるが身体が上下に動いている。生きているらしい。竹筒の水を唇に触れさせるとピクリと唇が動いて水を求める。近場に川があったはずだと、沙衣は子どもを抱き上げた。両親を亡くしてからの伯母の厳しい鍛錬の元、めきめきと実力をつけていった沙衣の身体能力は高い。腕力も米俵二つ程度なら軽々と担げるほどだ。
 川べりに子どもを転がして、手拭いを水に浸す。そうしてその手拭いを子どもの顔の上で絞った。途端、子どもの目が開く。黒い瞳が沙衣の茶色の瞳と合う。

「生き倒れ。お腹は空いてるの」
 それに返事を返すように盛大な腹の虫が鳴いた。
「そう。このまま歩けば昼の八つ半(午後三時くらい)には町につくの。今は昼の九つ(正午過ぎくらい)。生き倒れはいつから行き倒れてたの」
 竹筒の水をゆっくり飲ませながら沙衣が問う、水分を摂って落ち着いたのか生き倒れの子どもはケホ、と息をつくとしゃがれた声で答える。
「明の六つ(午前七時前)くらい…?」
 沙衣は呆れたように天を仰いで、視線を子どもに向けた。
「何処に行くの行き倒れ。それが私の道行の経過にあるのならば途中までなら付き添ってあげなくもない」
「えと、ありがとう。それと、僕は善法寺伊作って言うんだ。助けてくれてありがとう、えーと」
「霧壺沙衣。で、善法寺。何処に行くの」
「忍術学園ってところなんだけど」
 再び沙衣は天を仰いだ。
「お前…善法寺…。感謝しろ。私も目的地は忍術学園よ」
 そう沙衣が答えると、善法寺伊作はぱっと顔を輝かせた。
「本当!? よろしくね、沙衣ちゃん!」
 沙衣は眉を顰めながら干し飯を手渡す。
「…名前で呼ぶのは百歩譲る。でもその辺で行き倒れているお前のような奴に忍が務まるの?」
「……さあ? でもやってみないと分からないよ。沙衣ちゃんも忍を目指すんでしょ?」
「私は幼い頃から忍の教育を受けてる。それに、忍術学園に入る気は元々ない。私は伯母上の元で忍の研鑽を積んでいきたかったのに」
 そう呟いて、脳裏で伯母の言葉を反芻する。美しい伯母が沙衣を忍術学園へと送りだす際に言った言葉。

『あなたには忍術を学ぶ以外にも学ぶことは山とあるのです。それがわたくしと旦那様があなたに忍術学園に入るよう勧める理由です』

 忍を育てる学び舎で、忍術以外の何を学べと言うのか。

 感情を思い出しなさい、と伯母は言う。
 何故? そう沙衣は思った。

 情があったからこそ、かか様もとと様も私を逃がそうと時間を稼ぎ、敵の手に堕ちた。情を捨てて、私を顧みなかったら二人はまだ生きていたのかもしれない。
 瞼裏で赤と橙が躍る。夕の七つ(午後四時半くらい)までには町につきたい。記憶の中にある色彩と同じ色で染まる空をあまり見たくないのだ。

 干し飯をしゃぶっている伊作を見て沙衣は土手の方へと足を向ける。

「行くわよ。善法寺。明日には学園に到着する見込みで私は動いている。遅れるつもりなら置いて行く」
 先程まで行き倒れてた身体には心底酷だろうに、伊作はまろぶようにして沙衣の後を追いかけた。

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
11 2024/12 01
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
オフライン
「ツキトリム」
cookieさんと合同で「めろんしろっぷ。+ツキトリム」で参加中。
参加予定。
09/16 COMIC CITY 福岡30:M48b
10/21 十忍十色 筑前の段 其の六:H5,6

発行物。
かんたんなはなし(タカ綾)
この好きは『好き』でいいのでしょうか?(次浦+綾)
私は彼女が幸せであるよう希う(再録:私が彼を嫌いな理由。&ハッピーエンドをつかみとれ!)(次浦+綾)
海に関するetc.(次浦+綾(タカ綾))
リンク
相互*敬称略*
めろしろ。
cookie
小説など。ジェ○禁、落乱、APH、そのほか雑食。
徒然なるままに
ナルミ
夢小説や二次・小ネタブログ。落乱・PH・青エク・イナイレなど。

サーチ。お世話になってます。
NRN

素材。お世話になってます。
web*citron
ブログ内検索
Twitter
P R
描いてくれるとうれしいです
最新コメント
[08/30 那樹]
[02/23 cookie]
プロフィール
HN:
いお
年齢:
37
性別:
女性
誕生日:
1987/03/19
自己紹介:
五年(特にい組)と三年と綾部が好きな一般人←
最近ハートの国のアリスシリーズにハマったらしいです。
***

バーコード
最新トラックバック
管理者用
忍者ブログ [PR]