色々ネタ置き場(主にRKRN)。
主に二次創作・夢小説系。ごく稀にオリジナルもあるかもしれない。。。
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沙衣は燃え盛る家を遠くから見ていた。
つい先刻まで両親と穏やかに暮らしていた家だ。
洞窟から這い出して、教えられていた通りに発破をかけた。洞窟の道は塞がれ、追手が来る事はないだろう。音も出来るだけ小さくなるように作られたものだし、炎や柱が倒壊する音で…目立たないと思う。
『沙衣、あなたは闇を駆ける事なく…陽の光の元穏やかに暮らせるように……。姉上には沙衣には普通の暮らしを、と。忍暮らしなどせぬよう、と固く固くお約束して頂いております』
洞窟へと通じる隠し戸の前で母はそう言う。沙衣は男児の着物に着替えさせられ、髪も結い上げて見た目は幼い男児。
『姉上の…伯母上の元へとお逃げなさい。そうして、父と母が伯母上の所へ参らなければ……靜那に父と母が果てた事を知らせなさい。仇打ちなど努々考えるなと、申し置いておくのですよ。ここは、父と母で切り抜けますゆえ』
身を守るために、と苦無を一振り。火種と発破の為の火矢を渡し、美しく聡明な母は優しく笑う。背を向ける間際には、戦うくノ一の厳しい表情に切り替わっていた。
父は既に家に忍び込んだ忍たちと応戦していて、金属の打ち合う音や焙烙火矢の爆発音が聞こえていた。
「とと様…かか様……」
苦無を握りしめ、溢れる涙をぐっと袖で拭い去る。
背後には黒装束の忍。
洞窟を出た際にたまたまいた忍。敵方の忍の筈なのに「元々手を貸す気はなかった」「霧壺の血は惜しい」と言い私を人里まで送ると申し出た奇矯な奴。
とと様かか様。
沙衣は陽の光の下を歩きませぬ。とと様とかか様と同じく闇を駆け、姉様にも負けぬ忍となります。
そして、とと様とかか様を殺めた忍たちをいつか……。
「忍術学園ですか。伯母さま」
焦げ茶の真っ直ぐな垂髪の幼い少女が表情も声も平坦そのもので、目の前の美しい年齢不詳の伯母である女性を見上げた。
「ええ。お前の姉の靜那も在学していたでしょう。沙衣、お前も半年後には入学するのですよ」
「私、学園で学ぶ事などございません」
少しばかり眉間にしわを寄せ、不機嫌そうに沙衣は答えた。その不機嫌そう、は目の前の伯母が分かる程度で、普通の人間ならば淡々としたものに見えただろう。
「確かに、技術面では同年代の者はお前には敵うまい。そうね、三、四年生辺りまでなら余裕で勝てるでしょうよ。けれどね、お前は情緒面に問題があるのですよ」
「……ちゃんと状況に合わせて私は感情を表に出せます。任務でもないのに泣いたり笑ったりなんてする必要がありません」
この数年沙衣は憎しみだけで生きてきた。修行を経て天賦の才と言うのだろうか…海綿が水を吸い込むように沙衣は忍の技を吸収し昇華させ、それと同時に徐々に心を失くしていった。伯母夫婦やその息子、そして実姉に愛情を注がれながらも、その心は開くことなく頑なに閉じたままだ。表情豊かで喜怒哀楽がはっきりしていた性格も同じように閉じていった。今は任務でなければ無表情で平坦な声。
「忍に感情など、不必要なものでしょう?」
淡々と沙衣は言う。伯母は深々と溜息をついた。
「……では、沙衣。憎しみも、不用のものでしょう?」
「…………」
途端黙りこんだ沙衣に伯母は畳み掛ける。
「忍術学園に参りなさい。沙衣。これは命令です。わたくしと夫の山田伝蔵からの命です。六年間たゆまぬ修練と良き人間関係を築き上げなさい。もしも、卒業した後も憎しみが消えていなければ、お前の両親を…わたくしの妹たちを殺した忍を捜せばいい。止めは致しませぬ」
ですから…今、家を出ようなどと努々考えてはなりませぬよ。
伯母の手には明日出立しようと纏めていた荷物一式がしっかりと握られていて。バレてはいないと高をくくっていた沙衣は唖然として伯母と荷物を見比べた。
「…伯母さま…」
「わたくしが分からぬとでもお思い? お前の行動など簡単に見抜けるのですよ」
ころころと伯母は笑う。その姿は記憶の中の母と重なって、沙衣は鼻の奥がツンと痛むのを感じた。
桃姫繚乱。
何か、やっと本編書き始めた。
今まで傍観ネタとちょこっとした短編って言うかそんなのしか書いてなかったし。
構想はちゃんとあったんだ。最初からこれ書くつもりだったんだけど、傍観ネタが先走った件……。
主人公は沙衣ちゃんになります。
でサイドストーリー的に他の夢主達の話も絡めつつ。
主軸は沙衣ちゃん。
つい先刻まで両親と穏やかに暮らしていた家だ。
洞窟から這い出して、教えられていた通りに発破をかけた。洞窟の道は塞がれ、追手が来る事はないだろう。音も出来るだけ小さくなるように作られたものだし、炎や柱が倒壊する音で…目立たないと思う。
『沙衣、あなたは闇を駆ける事なく…陽の光の元穏やかに暮らせるように……。姉上には沙衣には普通の暮らしを、と。忍暮らしなどせぬよう、と固く固くお約束して頂いております』
洞窟へと通じる隠し戸の前で母はそう言う。沙衣は男児の着物に着替えさせられ、髪も結い上げて見た目は幼い男児。
『姉上の…伯母上の元へとお逃げなさい。そうして、父と母が伯母上の所へ参らなければ……靜那に父と母が果てた事を知らせなさい。仇打ちなど努々考えるなと、申し置いておくのですよ。ここは、父と母で切り抜けますゆえ』
身を守るために、と苦無を一振り。火種と発破の為の火矢を渡し、美しく聡明な母は優しく笑う。背を向ける間際には、戦うくノ一の厳しい表情に切り替わっていた。
父は既に家に忍び込んだ忍たちと応戦していて、金属の打ち合う音や焙烙火矢の爆発音が聞こえていた。
「とと様…かか様……」
苦無を握りしめ、溢れる涙をぐっと袖で拭い去る。
背後には黒装束の忍。
洞窟を出た際にたまたまいた忍。敵方の忍の筈なのに「元々手を貸す気はなかった」「霧壺の血は惜しい」と言い私を人里まで送ると申し出た奇矯な奴。
とと様かか様。
沙衣は陽の光の下を歩きませぬ。とと様とかか様と同じく闇を駆け、姉様にも負けぬ忍となります。
そして、とと様とかか様を殺めた忍たちをいつか……。
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「忍術学園ですか。伯母さま」
焦げ茶の真っ直ぐな垂髪の幼い少女が表情も声も平坦そのもので、目の前の美しい年齢不詳の伯母である女性を見上げた。
「ええ。お前の姉の靜那も在学していたでしょう。沙衣、お前も半年後には入学するのですよ」
「私、学園で学ぶ事などございません」
少しばかり眉間にしわを寄せ、不機嫌そうに沙衣は答えた。その不機嫌そう、は目の前の伯母が分かる程度で、普通の人間ならば淡々としたものに見えただろう。
「確かに、技術面では同年代の者はお前には敵うまい。そうね、三、四年生辺りまでなら余裕で勝てるでしょうよ。けれどね、お前は情緒面に問題があるのですよ」
「……ちゃんと状況に合わせて私は感情を表に出せます。任務でもないのに泣いたり笑ったりなんてする必要がありません」
この数年沙衣は憎しみだけで生きてきた。修行を経て天賦の才と言うのだろうか…海綿が水を吸い込むように沙衣は忍の技を吸収し昇華させ、それと同時に徐々に心を失くしていった。伯母夫婦やその息子、そして実姉に愛情を注がれながらも、その心は開くことなく頑なに閉じたままだ。表情豊かで喜怒哀楽がはっきりしていた性格も同じように閉じていった。今は任務でなければ無表情で平坦な声。
「忍に感情など、不必要なものでしょう?」
淡々と沙衣は言う。伯母は深々と溜息をついた。
「……では、沙衣。憎しみも、不用のものでしょう?」
「…………」
途端黙りこんだ沙衣に伯母は畳み掛ける。
「忍術学園に参りなさい。沙衣。これは命令です。わたくしと夫の山田伝蔵からの命です。六年間たゆまぬ修練と良き人間関係を築き上げなさい。もしも、卒業した後も憎しみが消えていなければ、お前の両親を…わたくしの妹たちを殺した忍を捜せばいい。止めは致しませぬ」
ですから…今、家を出ようなどと努々考えてはなりませぬよ。
伯母の手には明日出立しようと纏めていた荷物一式がしっかりと握られていて。バレてはいないと高をくくっていた沙衣は唖然として伯母と荷物を見比べた。
「…伯母さま…」
「わたくしが分からぬとでもお思い? お前の行動など簡単に見抜けるのですよ」
ころころと伯母は笑う。その姿は記憶の中の母と重なって、沙衣は鼻の奥がツンと痛むのを感じた。
桃姫繚乱。
何か、やっと本編書き始めた。
今まで傍観ネタとちょこっとした短編って言うかそんなのしか書いてなかったし。
構想はちゃんとあったんだ。最初からこれ書くつもりだったんだけど、傍観ネタが先走った件……。
主人公は沙衣ちゃんになります。
でサイドストーリー的に他の夢主達の話も絡めつつ。
主軸は沙衣ちゃん。
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「ツキトリム」
cookieさんと合同で「めろんしろっぷ。+ツキトリム」で参加中。
参加予定。
09/16 COMIC CITY 福岡30:M48b
10/21 十忍十色 筑前の段 其の六:H5,6
発行物。
かんたんなはなし(タカ綾)
この好きは『好き』でいいのでしょうか?(次浦+綾)
私は彼女が幸せであるよう希う(再録:私が彼を嫌いな理由。&ハッピーエンドをつかみとれ!)(次浦+綾)
海に関するetc.(次浦+綾(タカ綾))
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いお
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37
性別:
女性
誕生日:
1987/03/19
自己紹介:
五年(特にい組)と三年と綾部が好きな一般人←
最近ハートの国のアリスシリーズにハマったらしいです。
最近ハートの国のアリスシリーズにハマったらしいです。
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