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色々ネタ置き場(主にRKRN)。 主に二次創作・夢小説系。ごく稀にオリジナルもあるかもしれない。。。
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何か綾部vs次屋なつもりがvs藤内な感じに…。
結構あっさりと喜八瑠ちゃんが退くのは藤内だからだろうな。

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 綾部喜八瑠はチョコレートが入っている包みを二つ準備して鞄を持った。同室の平滝姫が「行くぞ」と声をかける。

「…さすがに今年は絶対準備してるよね」
 去年は食ってやったけど…忌々しい。

 ぼそりと呟きながらコートを羽織った。

□■□



「藤内おはよ! そしてハッピーバレンタイン!」
 ピンクの包装紙でラッピングされた箱を三反田数が差し出してきたのを受け取りながら、浦風藤内は笑う。
「おはよう、数。毎年ありがとう。私からもハッピーバレンタイン」
 通学鞄とは別に持ってきた手提げ袋から同じようにラッピングした包みを取り出して、数に渡す。
「ありがとー藤内! 今回何作ったの? 私はクッキー焼いてチョコつけたんだけど」
「私は絞り出しのチョコ。アラザンとかチョコスプレーとかかけただけだけど…」
「絞り出しもやっぱりトリュフみたいなの?」
 数が首を傾げて問うと藤内は頷いた。
「私が見たのはガナッシュにしたのを絞り出すものだったけど…」
「手間だねぇ」
「数のも手間じゃん」
「でもバレンタイン前日が平日ってヤになるよねー。時間がないっての」
「前日は休みがいいよね確かに」
 二人でひとしきり頷くと、数が手提げ袋をじっと見て問う。
「藤内は今から二組と一組行くの?」
「うん。朝の内に渡しておきたいし。数は通学中に作と三之助には渡したんでしょ?」
「左門も来たらいたから渡したよ。後は孫兵と一二年と善法寺先輩に」
「そうなんだ。高等部まで回れるかな?」
「んー………回ろうと思えば回れる感じじゃないかな」
 数が時計を見上げて答えた。
「じゃあサクサク配ろうか」
「そうだね! あ、藤内藤内」
 藤内の腕を引いて数がにやぁと笑う。その表情に藤内は訝しげに眉を寄せた。
「何?」
「今年はちゃんと用意しているんだよね?」
 誰に、とは数は言わないが藤内はすぐに理解する。一年目は諸事情で彼だけ渡さなかったし、二年目は一応用意はしていたが喜八瑠に食べられたので渡しそびれた。今回も彼女の妨害はあるだろうが、所謂恋人同士になって初のバレンタインデーである今日は渡さないとダメだろう。ということで対策はしている。その対策にも彼女が対応しようものならもう仕方がない。バレンタインのチョコレートは諦めろ、としか言いようがない。
「今年はね。対策もしてるけど…」
「対策? あぁ、綾部先輩かぁ……。三之助も厄介なのを長年敵に回してるよねえ」
 ふぅ、と数は視線を遠く投げた。
「厄介……いや、うん…否定はできないけど……」
 彼女の三之助に対する様々な対応を思い出して、藤内は視線をそらす。
「藤内が大好きで三之助が大嫌いだからねえ。『昔』から」
 仕方ないよねえ。と数は藤内の手を引いて教室を出た。
「うん…『昔』からね…。大事に思ってもらうのは嬉しいけど、お陰で隆丸さんに申し訳なくなるよ最近」
 喜八瑠の恋人である斉藤隆丸には迷惑を掛けっぱなしだと藤内は隆丸がいるであろう高等部校舎に視線を向けた。喜八瑠の中で最優先事項は“藤内”で次点に“隆丸”が来るのだろう。と、たまたま帰りに一緒になった時に隆丸が言っていたのを思い出す。
「あー…藤内優先にして蔑ろにされちゃったりする時がたまにあるからね…私はアレ、極度のシスコンだと最近思い始めたんだ」
「シスコン…喜八瑠先輩が姉かあ。本当に姉妹だったら再起不能になるまで徹底的に攻撃すると思うよ。自分の義弟になるわけだし…物凄く嫌がりそう」
「いやそれ俺もすごく嫌だ」
 ガラリと二組の教室のドアを引くと目の前に三之助がとても嫌そうな顔で立っていた。どうやら今の会話を聞いていたらしい。
「おはよう、三之助」
「先刻振り、三之助」
「綾部先輩と義姉弟とか俺死ねる」
「あ、藤内! チョコー!」
 それを想像したのか顔を覆って死にそうな顔をしている三之助を突き飛ばして左門が珍しく正確に藤内に近づいた。本来なら明後日の方向に行くはずなのに、と感心しながら藤内は左門にチョコレートが入っている包みを渡す。左門は包みを受け取るとにかっと晴れやかな笑顔を向ける。
「ありがとう! 藤内」
「作も」
「おう。ありがとな」
 いつの間にか傍にいた作兵衛にも「はい」と渡すと彼もちょっと嬉しそうに笑う。
「藤内! 俺にも!」
 チョコ頂戴! と喜色満面の笑みを浮かべて三之助が復活した。どうやら左門と作兵衛がもらうのを見てバレンタインデーを思い出したらしい。そんな三之助を一瞥して藤内は答えた。

「ないよ」

「え!?」

 三之助は驚愕に目を見開いて、他の三人も一様に目を丸くしている。そんな中するりと藤内の背中から腕を回して、耳元でぽつりと不思議そうな声が上がる。

「おやまあ。藤内、ないの? 次屋にチョコ」
「喜八瑠先輩、おはようございます」
「おはよう。はい、藤内の分」
 喜八瑠から黄緑色を基調に丁寧にラッピングされたものを渡され、藤内は「ありがとうございます」と礼を言う。
「で、ないの? 藤内」
「先輩の分はありますよ」
 どうぞ、と渡された包みを喜八瑠は嬉しそうに受け取る。傍から見ると全く表情が変わっているようには見えないが。
「ありがとう、藤内。で?」
「今はありません」
 にこりと笑って藤内が答える。
「ふぅん…今は、ねえ」
 ひやり、と周りの空気が一度下がった。

「三之助。私からだ」
「……ありがとうございます」
 滝姫が三之助にチョコレートを渡すのをちらりと横目で見た喜八瑠は視線を藤内に戻して口を開く。
「今年は対策を講じたわけだね」
「何のことでしょう」
 惚けた風に笑みを含んで答える藤内に喜八瑠は目を細めて口の端で笑う。
「…ふふ…ちょっと『昔』みたいだねえ、藤内。とても不思議ではあるけれど、アレがとても大事なんだね。今はかなり凹んでいるようだけれど?」
「仕方ありません」
 そう言う藤内の表情は愛しい者に向けるもので喜八瑠は眉をしかめた。
「………だから私はアレが嫌いなんだよ。私が知らない藤内を簡単に出してくるんだから」
「そうですか?」
「そうだよ。でもまあ…今年“は”諦めてあげる。忌々しいけどね」
 藤内や滝姫に分かる程度の綺麗な笑みを浮かべて喜八瑠は藤内から離れる。
「滝姫、戻ろう」
「え? あぁ…いいのか?」
 滝姫が藤内と三之助を交互に見て首を傾げた。
「うん。用事は済んだよ。私の負けだね今年は」
「…もうずっと負けてやれ」
「嫌だよ。じゃあね、藤内」
 ひらひらと手を振ると喜八瑠と滝姫は教室から出て、高等部校舎へと戻る。

「藤内、今はない、って?」
 喜八瑠達が戻るのを確認して数が問う。
「今この場にはないってこと。持ってきて三之助に渡してたら喜八瑠先輩が強奪して終わりだから…それは三之助も嫌でしょう?」
 だから、三之助の分は家にあるの。
 と藤内が言うと、数はぽんと手を打った。
「なるほど。じゃあ、ないよね」
「え? てことは俺の分」
「家にあるよ。だから取りに来てね」

 苦節二年。三年目にしてようやく藤内からバレンタインチョコレートをもらえると分かった三之助は一日中ご機嫌だったらしい。
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